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研究目的 | 研究概要

研究目的

three HNLC zones

北太平洋、赤道湧昇域、南極海は鉄の不足によって植物プランクトンの増殖が制限されている海域として知られており、赤道海域(IronEx I, II)、南極海(SOIREE)では米国を中心とした国際共同研究で中規模鉄散布実験による検証が行われた。北太平洋は、上記2海域とは異なった特徴を有した海域であり、鉄散布実験の必要性が広く認知され、PICES(北太平洋の海洋科学に関する政府間機構)に鉄散布実験に関するパネルが1997に設立され議論されてきた。その結果、過去の実験においては、効果の定量性が十分でない、海域による効果や生物群集の応答の差が研究されていないなどの問題点が指摘され、2001-2003年にかけて、北太平洋の東西で鉄散布実験を行うことが推奨され、各国で実質的な調整段階に入った。本研究の目的は北太平洋で鉄散布実験を行い、鉄散布の二酸化炭素吸収効果の検証と鉄散布が海洋生物に与える影響を解明する。

1997年の京都議定書の採択を受け、大気中二酸化炭素の増加の抑制に向け具体的な政策が求められるようになった。排出規制、排出権取引、二酸化炭素海洋投棄などの方策が考えられているが、海洋鉄散布による二酸化炭素吸収の促進も、効果・コストの面から有力な選択肢の一つとなっている。生物地球工学としての大規模な海洋鉄散布には、二酸化炭素の吸収や付随して期待されている魚類生産の増加といった正の側面と、底生生物やプランクトン群集に対する人為的関与といった未知または負の側面を有している。わが国が面している太平洋における精度の高い科学的知見や情報を政策決定者に対して提供することは緊急性が極めて高い課題である。

研究概要

海水中微量元素である鉄が不足し、窒素、珪素等の栄養塩が余っている亜寒帯太平洋の東西において、中規模の鉄濃度調節実験を行い、その内外で動植物プランクトン等海洋生物、微量金属、沈降粒子、炭素物質濃度を時系列的に観測し、海洋生態系への影響を明らかにし、二酸化炭素吸収機能強化手法としての鉄濃度調節の評価を行う。

  1. 鉄濃度調節が海洋生物に及ぼす影響に関する研究
    • 鉄濃度調節手法及び調節域追跡手法の確立及び鉄濃度調節に対する海洋生物群集(細菌、植物プランクトン、繊毛虫、甲殻類、魚類)の応答の解明。
    • 鉄濃度調節による、鉄以外の微量金属(マンガン、亜鉛、銅、コバルトなど)の動態とそれらの微量金属が生物群集に及ぼす影響の解明。
  2. 鉄濃度調節が植物生理・生産に及ぼす影響に関する研究
    • 鉄濃度調節による植物プランクトン生理(光合成、栄養塩取り込みなど)および生産への影響の解明。
    • 二酸化炭素吸収機能増大の鍵種である珪藻の鉄濃度調節に対する動態、および植物にとって鉄の利用しやすさに影響する鉄溶解度
  3. 鉄濃度調節が炭素循環に及ぼす影響に関する研究
    • 鉄濃度調節実験における海水二酸化炭素分圧、全炭酸、アルカリニティ等の海水中化学成分及び沈降粒子の化学成分を測定することによる炭素循環への影響の解明、および二酸化炭素吸収機能強化効果の検証。
    • 鉄濃度調節実験における鉄濃度変化の観測による、鉄濃度と炭素循環の定量的関係の解明。